Research Highlights :

細胞分裂で二役を演じる紡錘体微小管

01 September 2006 (Volume 1 Issue 9)

微小管の動態について提唱された新しい時空間モデルにより、細胞質分裂を制御する仕組みが明らかになった

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図1:線虫C. elegansの蛍光標識細胞が示す細胞分裂後期の各段階

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理研の発生生物学の研究者たちは、細胞分裂の最終段階である細胞質分裂において、細胞骨格の基本的構成単位である微小管が2つの役割を果たしていることを発見した。

細胞分裂をする際、細胞内の構造は、地球の北極と南極、赤道を連想させる状態になる。微小管でできた紡錘体は、「赤道」沿いに配置されたDNAを含む染色体と、「両極」付近の表層領域を結びつける。紡錘体が染色体を引っ張って赤道から引き離そうとすると、細胞膜は赤道に沿って少しずつ内側へとくびれ込み、分裂溝が形成される。こうして、細胞は最終的に2つの娘細胞に分裂する。

理研発生・再生科学総合研究センター(神戸)の杉本亜砂子と茂木文夫、米・ニューヨーク大学の研究者たちは、動物発生研究に用いられるモデル生物としておなじみの線虫(Caenorhabditis elegans)を使って研究を行い、細胞質分裂における微小管の動態には二段階の制御メカニズムが存在することを報告した。『Developmental Cell』誌に発表されたこのモデルにより、細胞の赤道沿いに分裂溝が形成される過程が明らかになった1

それによると、杉本らは蛍光標識分子を用いたライブイメージング法を使い、細胞骨格のさまざまな構成要素の密度と配置の経時変化を調べた(図1)。その結果、まず、分裂溝の形成前に、赤道面の微小管密度が高くなることが判明した。その間、細胞骨格のもう1つの構成要素であるアクチン繊維は、赤道のまわりに「収縮環」を形成し始めた。その後赤道面の微小管密度が低下し、逆に表層の両極付近で微小管密度が上昇すると、収縮環は収縮し始めた(図2)。「こうした観察結果と、変異体や薬物を使った解析結果とを組み合わせて考えたところ、微小管は細胞質分裂の初期段階で2つの役割を果たすことがわかりました。1つは収縮環の赤道への局在を『誘導』する役割、もう1つは、赤道面以外での分裂溝の形成を『抑制』する役割です」と杉本は説明する。

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図2:C. elegansの細胞質分裂 

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さらに杉本たちの研究チームは、微小管のこの一見矛盾する役割を解明するための実験を行った。分子生物学的手法により、微小管動態の制御にかかわる特定の因子の活性を操作したところ、この過程を制御する担い手となる物質が、微小管重合の核となるγ-チューブリンから、タンパク質リン酸化酵素であるオーロラAの増量を特徴とする第2の制御系へと徐々に移行することが明らかになった。

「微小管に2つの役割があるというこのモデルは、これまでの分裂溝の形成過程モデルに大きな修正を加えるものです。単一の制御系による既存のモデルでは、細胞質分裂のさまざまな段階について満足のいく説明ができないのです」と杉本はコメントしている。

  1. Motegi, F., Velarde N.V., Piano, F., & Sugimoto, A. Two phases of astral microtubule activity during cytokinesis in C. elegans embryos. Developmental Cell 10, 509–520 (2006) (doi 10.1016/j.devcel.2006.03.001). |article|