Research Highlights : Biology

単語の聞き取りに関係する脳波を発見

20 February 2009 (Volume 4 Issue 2)

無意識の言語学習が行われているときの脳活動パターンを解明、言語リハビリ効果の観察への利用に新たな期待が

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図1:新たな音列単語を提示してから400ミリ秒後に脳波計に記録された事象関連電位(ERP)の等高線図。(a)高成績グループのセッション1、(b)中成績グループのセッション3、(c)低成績グループのセッション3。(a)と(b)の類似性は、統計的学習が行われていることを示唆している。これに対して、(c)の活動は、効果的な統計的学習が行われていないことを示唆している。

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Reproduced from Ref. 1 © 2008 Seoul National University

人は他人の話を聞くとき、単語の切れ目にあたかも「間」があるように聞き取っている。しかし、実際に聞いているのは連続した音声であり、それを脳が意味のあるまとまりごとに区切っているのだ。このような「音声分節化」の能力に関与している過程の1つに、統計的学習とよばれるものがある。脳は統計的学習により、音などの事象が関連して一緒に発生する頻度を無意識に把握しているのである。このほど、理研脳科学総合研究センター(埼玉県和光市)の岡ノ谷一夫チームリーダー(TL)が率いる研究チームは、音声分節化および統計的学習の程度を反映する脳活動の特徴的パターンを発見した1

研究チームはまず、被験者に、コンピュータで合成した人工言語を1セッション6.6分として3セッション(計約20分間)聞かせ、その間の被験者の脳活動を脳電図(EEG)という測定方法を使って測定した。その後、計測された脳波のパターンと呈示された連続音との関連を解析した。

この人工言語は、発音可能な音節でできているわけではなく、音程のみが感じられる純音(12半音階)だけでできていた。「今回の研究では、言語能力に依存しない基本的知覚過程を検出するために、音列からなる無意味な単語を用いました」と、研究チームの一員であるDilshat Abla研究員は説明する。これにより、言語という特異的な例ではなく、一般的な統計的学習の脳活動の特徴に焦点を当てることが可能になった。被験者に聞かせた連続音には、それぞれ3つの音からなる音列、すなわち「単語」が6種類含まれていた。これらは、切れ目のない連続音として再生されたため、そこに含まれる単語の構成は、ただちに判別できるようなものではなかった。被験者にはリラックスして連続音を聞くように指示し、聞き終わってから3音からなる単語を何対か提示して、どちらが連続音の再生中に聞いた単語で、どちらがそうでない単語なのかを判断してもらった。

実験の結果、被験者の多くは、このような判断を正しく行うことができ、意識的に努力せずに統計的学習を行ったことが明らかになった。そして、この試験で高成績をおさめたグループと中程度の成績をおさめたグループでは、単語の第1音目で、振幅の大きい電位が観察された。この電気的特徴は、事象関連電位(ERP)として知られるもので、特定の事象に関連して一過性に生じる脳電位のことである。今回の場合、新規の音列単語を新たに提示してから400ミリ秒後に現れる傾向がみられた(N400電位)。N400電位は、高成績グループでは、1回目の試聴セッション(学習初期)で、中成績グループでは、3回目の試聴セッションで観察された。低成績グループの場合には、N400電位がいずれのセッションでも観察されず、このため各単語の分節化をさほどうまくできなかったと考えられる(図1)。

Abla研究員は、「今回の実験より、ERPは『統計的構造の発見期に最大』となることがわかりました。したがって、これは統計的学習の結果ではなく過程を表すものと考えられます」と語っている。

  1. Abla, D., Katahira, K., & Okanoya, K. On-line assessment of statistical learning by event-related potentials. Journal of Cognitive Neuroscience 20, 952–964 (2008). | article |

    本ハイライトの原著論文の著者等については、理研脳科学総合研究センター・生物言語研究チームまでお問い合わせください。