Research Highlights : Physics

テラヘルツ電磁波イメージングをめざして

13 March 2009 (Volume 4 Issue 3)

エバネッセント場を利用した新しい設計のテラヘルツ電磁波検出デバイスが、オンチップの高分解能イメージングデバイスを可能にする

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図1:オンチップでテラヘルツ電磁波を検出する。(a)開口部とプローブ層と検出器からなるオンチップテラヘルツ電磁場検出デバイスの写真。(b)電場が素子を通過して伝わる様子。開口部で生じたエバネッセント場はプローブ層によって強められ、薄いフィルム状の検出器に導かれる。

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テラヘルツ電磁波は現在、イメージング(画像撮影)とセンシング(検出)への応用という面で関心を集めている。テラヘルツ電磁波はX線に比べて対象に与えるダメージが少なく、これに取って代わる可能性があるからである。しかし、テラヘルツ電磁波のエネルギーは低く、その検出はむずかしい。今回、理研基幹研究所(埼玉県和光市)の河野行雄研究員と石橋幸治主任研究員は、高分解能で高感度の検出器を1つのチップ上に集積化したオンチップテラヘルツ電磁波検出デバイスの開発に成功した。

テラヘルツ電磁波は、いくつかの点でX線よりも優れている。まず、エネルギーが非常に低いため、材料へのダメージが少ない。また、テラヘルツ電磁波は水に強く吸収されるため、テラヘルツ電磁波を使って人体の柔らかい組織をイメージングすることができる。そのため、テラヘルツ電磁波を使ったイメージングやセンシングは、生体検査から食品検査に至る広範な分野で待ち望まれている。

しかし、これまでは小さくて効率的な検出器がないことが、テラヘルツ電磁波によるイメージングの普及の妨げになっていた。河野研究員らが今回『Nature Photonics』誌に発表1した高分解能のオンチップテラヘルツ電磁波検出デバイスは、テラヘルツ電磁波を通すための小さな開口部と、アンテナのような働きをするプローブから構成されている(図1)。この検出デバイスでは、水面の平面波が狭いスリットを通過すると同心円状の波に変わるように、小さな開口部を通過したテラヘルツ電磁波は密な「エバネッセント波」を形成する。

従来の設計では、検出器は開口部やプローブから離れた位置にあったため、開口部から遠ざかるにつれて急速に減衰するエバネッセント波の検出感度が低かった。河野研究員は、新しいデバイスについて、「我々の設計では、検出器は開口部やプローブと一体になっています。このため、エバネッセント波を直接検出することができるのです」と、その長所を説明する。

彼らの設計では、開口部は薄い金のフィルムの中に開けられており、テラヘルツ電磁波はこの開口部を通過する。このとき形成されたエバネッセント波は、蝶ネクタイ状の金のプローブ層の狭いすき間の中で強められ、検出器に到達する。検出器は薄い半導体膜でできており、この半導体膜には電子が動きやすい層が含まれていて、テラヘルツ電磁波を効率的に吸収できる。

今回、すべての部品を1つのチップ上に乗せたため、検出デバイスはシンプルで信頼性の高いものになり、最初のテストで、9マイクロメートルという高い分解能を達成した。これは、テラヘルツ波の波長の215マイクロメートルよりも著しく小さい。シンプルで信頼性の高い、新しい設計に基づくこの検出デバイスは、テラヘルツ電磁波イメージング技術を大きく発展させる可能性を秘めており、今後が期待されている。

  1. Kawano, Y. & Ishibashi, K. An on-chip near-field terahertz probe and detector. Nature Photonics 2, 618–621 (2008). | article |

    このハイライトの原著論文の著者などについては、理研基幹研究所石橋極微デバイス工学研究室までお問い合わせください。