原子核の中のボース・アインシュタイン凝縮
03 April 2009 (Volume 4 Issue 4)
酸素原子核の励起状態では、アルファ粒子が凝縮した状態になっている可能性がある

図1:原子核の構造。(a)酸素16の原子核の陽子と中性子は、基底状態では液体の分子のように無秩序にふるまっている。(b)船木基礎科学特別研究員らの計算によると、励起状態では陽子と中性子は集まって4個のアルファ粒子を形成し、これらのアルファ粒子が、従来のボース・アインシュタイン凝縮と似た単一の量子状態へと凝縮しうることが示された。
enlarge imageおよそ75年前に量子力学が誕生して以来、原子の電子構造に関する理解はほとんど変わっていない。最近では、スイスの欧州原子核共同研究機関(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が完成し、素粒子物理学の標準模型を構成する最後の粒子が間もなく見つかると期待されている。しかし、原子と素粒子の中間のスケールにある原子核のふるまいについては、驚くほどわずかなことしかわかっていない。
理研仁科加速器研究センター(埼玉県和光市)の船木靖郎・基礎科学特別研究員をはじめとする、日本、ドイツ、フランスの研究者たちからなる国際研究チームは、原子核のふるまいを決めるプロセスの解明を進めるために、最新の手法を用いて計算を行い、「酸素原子核中の核子は、寄り集まって、核子密度の低い異常な量子状態をとることがある」という仮説を検証した1。この量子状態は、ボース・アインシュタイン凝縮として知られている。
最低エネルギー状態にある原子核の陽子と中性子は、明確な構造をもたない単純な液体中の分子と同じようにふるまうと考えられている(図1a)。しかし、基底状態よりも大きなエネルギーでは、なんらかの秩序が現れることがある。例えば、炭素12の原子核中の陽子と中性子は、強く結合した3個のアルファ粒子(2個の陽子と2個の中性子からなる粒子)のクラスターを作る。こうしたクラスターの形成は、恒星での元素合成に重要な役割を果たしており、炭素原子核もこのような原理によって形成されると考えられている。
船木基礎科学特別研究員らは、以前の研究で、炭素12の原子核中のアルファ粒子が相互作用するメカニズムを調べた2。彼らの計算からは、炭素12の原子核は3個のアルファ粒子からなり、核子密度が基底状態の4分の1の励起状態が形成されることが確認され、これらのアルファ粒子がボース・アインシュタイン凝縮することが示された。
物質がこの異常な形をとるときには、系を構成する粒子のすべてが完全に同じ量子状態となっている。ボース・アインシュタイン凝縮状態は、ある種の元素の希薄な原子気体を、絶対零度に近い温度まで冷却したときに観察されることが多い。この状態は20世紀初頭に予言され、1995年に実現されているが、それが原子核の内部や崩壊する恒星などの原子核系でも起こる可能性があることが提案されたのは、つい最近のことである。
船木基礎科学特別研究員らは今回、酸素16の原子核(炭素12の原子核よりもアルファ粒子1個分だけ多い核子からなる)を調べて、これがアルファ粒子の凝縮系であることを立証しようとした(図1b)。この計算結果により、実験結果と一致するエネルギーでアルファ粒子の凝縮状態が形成されることが示された。
- Funaki, Y., Yamada, T., Horiuchi, H., Röpke, G., Schuck, P. & Tohsaki, A. α-particle condensation in 16O studied with a full four-body orthogonality condition model calculation. Physical Review Letters 101, 082502 (2008). | article |
- Funaki, Y., Tohsaki, A., Horiuchi, H., Schuck, P. & Röpke, G. Analysis of previous microscopic calculations for the second 0+ state in 12C in terms of 3-α particle Bose-condensed state. Physical Review C 67, 051306 (2003).
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