Research Highlights : Biology

パブは体によくない?

10 April 2009 (Volume 4 Issue 4)

pubとよばれる遺伝子が植物の免疫機能を抑制している

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図1:植物病原菌である、べと病菌(Y字形の糸状構造)に感染したシロイヌナズナの葉。pub遺伝子を欠損した植物体は正常な植物体よりも免疫機能が高まっており、べと病菌のような病原体の増殖を抑えることができる。

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Copyright © 2008 Ken Shirasu

植物は、感染症を引き起こす病原体がもつ特徴的な分子群を感知することができる。こうした分子群は病原体関連分子パターン(PAMP)として知られ、植物はPAMPにさらされるといくつかの応答を引き起こし、それらが総合されて防御免疫応答が生じる。

このほど、理研植物科学研究センター(神奈川県横浜市)およびジョン・イネス・センター(英国、ノリッジ)に所属する白須賢グループディレクター(GD)らの研究チームは、シロイヌナズナ(Arabidopsis)において、PAMPが引き起こす免疫応答を妨げる互いによく似た3つの遺伝子を発見した1pub22pub23pub24とよばれるこれらの遺伝子は、ユビキチンリガーゼ(PUB)という酵素をコードしている。PUBは、ユビキチンという普遍的な修飾タンパク質を標的タンパク質に付加して標識する過程に関与する酵素である。

興味深いことに、これら新規の3つのpub遺伝子は、タバコの病害抵抗性を高めることが知られている遺伝子に似ていた。そこで、研究チームはこれらの遺伝子を詳細に検討することにした。その結果、驚いたことに、この3つの遺伝子をすべて不活性化したシロイヌナズナの変異株では、免疫応答が亢進していた。このことは、これらの遺伝子が免疫機能を抑える働きをしていることを意味している。

PAMPにさらされて最初に起こる免疫応答の1つが、反応性酸素化合物、つまり活性酸素の急速な発生である。これらの遺伝子の三重変異株では野生株に比べて、この活性酸素発生がより強く、より長く続いた。また変異株では、免疫応答を強く誘導することが判明しているシグナル伝達分子や遺伝子も長期にわたり活性化されており、病原体感染部位における細胞死が増加していた。

このような免疫機能の亢進は、1種類の病原体PAMPに特異的なものではなく、細菌の鞭毛や真菌の細胞壁、細菌のDNA転写タンパク質に由来する複数のPAMP刺激にも応答して起こった。さらに、pub遺伝子が欠損している場合には、病原体そのものの増殖が抑えられることがわかった。変異株に感染した細菌やカビの増殖は、野生株に感染した場合よりも最大でおよそ30分の1まで低下していたのである(図1)。

PUBは、免疫を促進する分子にユビキチンを結合させることで、その分子の活性を損なわせたり妨げたりしているらしい。哺乳類では既に、これと似たような現象が観察されており、タンパク質のユビキチン化によりシグナル伝達が損なわれることが知られている。

研究チームは今後、これら3種類のPUBの標的となる分子を突き止めたいと考えている。標的分子がわかれば、なぜ植物が病害を受けやすくなるような遺伝子を持ち続けているかという、最大級の謎を解く手がかりが得られるかもしれない。

白須GDは、「植物は日常的に病原体にさらされており、なおかつ適度な免疫応答を必要とするため、無駄なエネルギーは使わぬようにしているのです」と説明している。そして、「このような調節遺伝子について得られた情報によって、農作物の病害抵抗性の向上が期待できます。特に、ある農作物を、その農作物にとって未知の病原体が存在する遠隔地へ導入するような場合に有用でしょう」と今後の展望を語っている。

  1. Trujillo, M., Ichimura, K., Casais, C. & Shirasu, K. Negative regulation of PAMP-triggered immunity by an E3 ubiquitin ligase triplet in Arabidopsis. Current Biology 18, 1396–1401 (2008). | article |


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