Research Highlights : Biology

自己免疫の「ダブル・トラブル」遺伝子が見つかった

10 April 2009 (Volume 4 Issue 4)

1つの遺伝子に生じた変異によって、2種類の自己免疫疾患の発症リスクが増大する

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図1:関節リウマチになって関節が腫れ上がると、日常の何気ない動作をするのにも苦痛を伴うことになる。

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自己免疫疾患である関節リウマチ、および全身性エリテマトーデスの発症しやすさ(感受性)を高める2つの一塩基多型(SNP)が、理研を中心とする日本の研究チームによって突き止められた。これらのSNPは、免疫系を構成する細胞の調節に携わるタンパク質の遺伝子に生じている。また、SNPは現在のところ東アジア人でしか見つかっていないが、2つの自己免疫疾患の発症におけるこれらSNPの作用を解明できれば、すべての人種を対象に、より優れた治療法の確立が期待できると、研究チームは考えている。

関節リウマチは、体内の免疫系が関節を攻撃し、破壊してしまう疾患で、激しい痛みを伴う(図1)。関節リウマチは100人に1人の割合で発症し、遺伝要因によっても環境要因によってもその感受性は高まる。変異によって関節リウマチの発症リスクを増大させる遺伝子は、ほかの研究チームによっても既にいくつか見つかっている。そのうちの一部の遺伝子は、おそらく自己免疫のプロセスに総合的にかかわっており、全身性エリテマトーデスなど関節リウマチ以外の自己免疫疾患の発症リスクも同時に増大させると考えられる。

今回の研究は、理研ゲノム医科学研究センター(神奈川県横浜市)の研究者が中心となって行われたもので、その成果は『Nature Genetics』誌に発表された1。研究チームは、SLAM(signaling lymphocyte activation moleculeの略)ファミリーとよばれる遺伝子群が存在する、ヒト1番染色体長腕領域を重点的に解析した。というのも、SLAMファミリータンパク質は、免疫系細胞の制御に関与するため、自己免疫疾患にかかわっているのではないかと考えられたからだ。また、これまでの複数の研究から、この染色体領域と、関節リウマチおよび全身性エリテマトーデスの発症リスクの上昇との関連性が示唆されていたことも、その理由の1つとなった。

研究チームは、1つは関節リウマチ患者830人と対照健常者658人、もう1つは患者1112人と健常者940人という、2つの独立した日本人集団について解析した。その結果、SLAMファミリー遺伝子の1つであるCD244に、関節リウマチと密接に関連する5つのSNPがあり、5つの中でも2つに最も強い関連が認められることを突き止めた。さらに、これらのSNPが全身性エリテマトーデスの感受性も増大させることも明らかにした。

これら5つのSNPはすべて、CD244のイントロン(遺伝子内にあってタンパク質合成までの過程で切り出されることになるDNA配列)部分にあった。近年、イントロンは遺伝子活性の調節に何らかの役割を果たしているのではないかと考えられるようになっている。研究チームはこれらの結果を踏まえて、CD244の転写量が各SNPによってどのような影響を受けるかを詳しく調べ、5つのうち関連が強かった2つのSNPで遺伝子活性が顕著に増大することを見つけた。

研究チームによれば、CD244は免疫系のナチュラルキラー(NK)細胞を活性化あるいは抑制するタンパク質をコードしていることがわかっているので、CD244のSNPと自己免疫疾患の感受性に相関がみられることは不思議ではないという。「しかし、それに関与する分子レベルのメカニズムはまだ正確にはわかっていません」と、プロジェクトを率いる山本一彦チームリーダーは語っている。

  1. Suzuki, A., Yamada, R., Kochi, Y., Sawada, T., Okada, Y., Matsuda, K., Kamatani, Y., Mori, M., Shimane, K., Hirabayashi, Y., et al. Functional SNPs in CD244 increase the risk of rheumatoid arthritis in a Japanese population. Nature Genetics 40, 1224–1229 (2008). | article |


    本ハイライトの原著論文の著者等については、理研ゲノム医科学研究センター・自己免疫疾患研究チームまでお問い合わせください。