有機発光で明るい未来を
17 July 2009 (Volume 4 Issue 7)
新しいりん光錯体で高効率発光デバイスの製造が容易に

図1: りん光イリジウム-アミジナート錯体(左上)は優れた発光体となるため(下)、高効率ノンドープりん光OLED(右上)の作製が初めて可能となった。
enlarge imageReproduced from Ref. 1 with permission from the authors and The Royal Society of Chemistry
有機発光ダイオード(OLED)は照明技術に革命を起こし、薄型でフレキシブルな超高輝度デバイスの時代が幕を開けようとしている。OLEDの最大の長所は、自ら発光するため液晶ディスプレイに用いられているようなバックライトは不要であり、電力消費量が少ないことである。しかしながら、その製造工程は難しく、費用もかかる。
最近のOLEDデバイスの作製において特に注目されているのは、電圧を印加すると、高い効率で持続的に発光するりん光金属錯体である。しかしりん光OLEDは、その製造工程に難点がある。ホストマトリックスに金属錯体を添加する「ドーピング」という工程に、厳しい濃度条件が課せられている。濃度が高すぎると、錯体どうしが相互作用し、かえってりん光発光が弱くなってしまうのである(自己消光)。
このほど、理研基幹研究所(埼玉県和光市)の侯召民主任研究員が率いる研究チームは、OLEDを製造する際のドーピング濃度の厳しい制約を除く方法を開発し、『Chemical Communications』に発表した1。研究チームは、自己消光相互作用を抑える分子を発光金属錯体に導入することより、初めて、広範なドーピング濃度で高効率OLEDを作製することに成功したのである。
今回の方法では、りん光イリジウム金属錯体をアミジナートという分子で修飾した。これらの分子は窒素原子を介してイリジウムと結合しており、電子は金属錯体の中心付近に局在化している。錯体の端部にあるかさ高い炭素基によって、錯体どうしの相互作用や、りん光の自己消光が阻止される。
イリジウム-アミジナート錯体を用いて作製した試作品のOLEDデバイスは、非常に低い駆動電圧で、明るい黄緑色の発光を示した(図1)。そしてこのOLEDデバイスの作製には、7~100%という広範囲のドーピング濃度が利用できることがわかった。
「我々の研究プロジェクトの1つで、さまざまなアミジナート化合物を高い効率で合成することに成功しています。立体障害のあるアミジナート基を用いれば、りん光金属錯体のこれまでの欠点を克服できるとひらめいたのです」と侯主任研究員はいう。
侯主任研究員によると、このイリジウム錯体自体に電荷輸送能力があるため、ホストマトリックスを用いる必要はないという。そのうえ、イリジウム-アミジナートりん光錯体は優れた性能をもち、合成が容易であるため、フラットパネル・ディスプレイや有機照明などに広く応用できると考えられる。
「我々は現在、異なる波長で発光するりん光金属錯体にもアミジナート分子を用いようとしています。これがうまくいけば、さまざまな色の新しい高性能OLEDデバイスが作製できるようになるでしょう」と侯主任研究員は語っている。
- Liu, Y., Ye, K., Fan, Y., Song, W., Wang, Y. & Hou, Z. Amidinate-ligated iridium(III) bis(2-pyridyl)phenyl complex as an excellent phosphorescent material for electroluminescence devices. Chemical Communications published online 2009 (doi: 10.1039/b902807b). | article |
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