Research Highlights :

ハイブリッド構造で高感度化達成

05 February 2010

異なる設計コンセプトを組み合わせた高感度検出器により、テラヘルツ放射の応用範囲が拡大


図1: 高感度検出器が搭載されたチップの写真

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© (2009) RIKEN

テラヘルツ放射(THz)はユニークな特徴をもっており、がんなどの疾患を検出・診断する新しいイメージング技術の基礎となる可能性がある。そのうえ、THz放射の光子のエネルギーはX線の約10万分の1しかないので、はるかに安全であると考えられている。

しかし残念ながら、従来のTHz検出器では効率が低かった。THz放射は、マイクロ波電子回路で扱うには周波数が高すぎ、光電子デバイスで扱うにはエネルギーが低すぎるからである。このほど、理研基幹研究所(埼玉県和光市)の河野行雄専任研究員らは、いくつかの先端的なデバイスコンセプトを組み合わせることによって、わずか数個のTHz光子を検出できる高感度THz検出器(図1)を作製することに成功した1

実用的な検出器は、検出しようとする放射を吸収することと、この吸収に対して応答し測定可能な信号を発することという2つの重要な機能が必要である。この2つの機能は、通常、デバイス中の1つの構成要素が担っている。しかし、河野専任研究員らが開発した検出器では、2つの構成要素がそれぞれの役割を分担している。

その1つは、二次元電子ガス(2DEG)という構造体であり、これがTHz放射を吸収する。2DEGは、2種類の半導体材料(今回はGaAsとAlGaAs)の間に閉じ込められた薄い電子層であり、電子は層内を自由に動き回ることができる。2DEGは非常に伝導性が高いため、THz放射をよく吸収する。

研究チームは、2DEGの上部にカーボンナノチューブ単電子トランジスターを作製した。これは、電気的スイッチのように振る舞うデバイスであり、1個の電子がチャネルに存在するかどうかによって電気的特性が制御される。研究チームは、このトランジスターの真下にある2DEGがTHz放射を吸収すると、トランジスターのスイッチング電圧がシフトすることを見つけた。また、極めて微弱な放射でも、テレグラフノイズとして知られる断続的なスイッチング挙動を観測することができた。つまり、ほんの数個の光子があればスイッチングを引き起こすことができると考えられる。

このデバイスは、かつてないほど高い検出感度を達成しただけでなく、最近実証された検出器よりもはるかに高い温度で動作する。そのため、冷却方法を大幅に簡素化することができ、実用化に際し、低コスト化・簡便化が可能になる。

「今回我々が開発した超高感度検出器は、将来的には、THz領域に重要な情報が隠れていると予想されているナノ材料、バイオサイエンス、天文学の分野で、強力なツールとして活躍するようになるかもしれません」と河野専任研究員は語っている。

本ハイライトの原著論文の著者情報などについては、理研基幹研究所 石橋極微デバイス工学研究室までお問い合わせください。

  1. Kawano, Y., Uchida, T. & Ishibashi, K. Terahertz sensing with a carbon nanotube/two-dimensional electron gas hybrid transistor. Applied Physics Letters 95, 083123 (2009). article