滲出型加齢黄斑変性にかかわる遺伝子
17 February 2012
日本人に多い、滲出型加齢黄斑変性の発症には4つのゲノム領域がかかわっている

図1: 健常者の眼底写真。AMDを発症した眼底には、他の領域より暗い領域が現れる。その変化により視力障害を引き起こし、先進国での高齢者における重篤な視力障害の主因の1つとなっている。
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加齢黄斑変性(AMD)は加齢に伴って生じる一般的な疾患で、欧米では主な失明の原因となっている。眼の網膜は、視覚刺激を電気シグナルへと変換し脳に伝える機能の一部を担っているが、AMDはこの網膜を構成する細胞の細胞死によって引き起こされると考えられている。アジア人で多く見られる滲出型AMDは、網膜内に異常な血管が侵入することで障害が引き起こされる。一方、欧米人では、このような種類のAMDの発症傾向は低い。このたび、理研ゲノム医科学研究センター(神奈川県横浜市)多型解析技術開発チームの久保充明チームリーダー(TL)をリーダーとする研究チームは、日本人で滲出型AMDの発症リスクを高める4つのゲノム領域を同定した1。
研究チームは、滲出型AMDの発症にかかわるゲノム領域を探すために、ヒトゲノムに生じた塩基1個の変化(一塩基多型、SNPと呼ばれる)を調べた。滲出型AMD患者と対照者(図1)で、50万個のSNPの出現頻度を比較したのである。すでにほかの研究チームにより、欧米人についてはAMDに関する全ゲノム関連解析(GWAS)が行われていたが、日本人を対象とする解析はこれまで手つかずの状態だった。
研究チームはまず、日本人の滲出型AMD患者800人と対照者3000人に対してGWASを行い、欧米人でAMDとの関連がすでに報告されていた2つのゲノム領域を同定した。このことは、AMDの発症機構が日本人と欧米人で似通っていることを意味している。
さらに研究チームは、患者700人と対照者1万5000人を対象に追試研究を行い、最初のGWASで滲出型AMDとの関連の可能性が新たに認められた77のゲノム領域を入念に調べた。その結果、滲出型AMDと関連のあるゲノム領域が、新たに、4番染色体と8番染色体上に見つかった。このうち4番染色体上の領域には、4個の遺伝子が近接して並んでおり、どの遺伝子が実際に発症リスクに関与しているのかを特定することはできなかった。一方、8番染色体上の領域に関しては、TNFRSF10Aという遺伝子と関連していることがわかった。TNFRSF10Aは眼球で発現しており、炎症や細胞死を調節する受容体をコードしている。
これまでの研究から、TNFRSF10AのSNPは遺伝子発現を調節するプロモーター領域に存在していることがわかっている。今回研究チームは詳細な解析を行い、そのSNPが滲出型AMDに強く関連していることを明らかにした。つまり、滲出型AMDの発症には、この受容体の発現の変化が関与していることが示唆される。研究チームは、今後、この受容体から開始されるシグナル伝達経路が、滲出型AMDの発症にどう影響するのかを詳しく調べる予定である。
滲出型AMD発症にかかわるこれらのゲノム領域が同定されたことは、新たな治療法の開発に役立つと期待される。久保チームリーダーおよび論文の筆頭著者である荒川聡研修生は、「今回の結果は、滲出型AMD発症リスクの予測モデルの作成にも役立ってくれるでしょう」と語っている。
本ハイライトの原著論文の著者情報などについては、理研ゲノム医科学研究センター多型解析技術開発チーム(Laboratory for Genotyping Development, RIKEN Center for Genomic Medicine)までお問い合わせください。
- Arakawa, S., Takahashi, A., Ashikawa, K., Hosono, N., Aoi, T., Yasuda, M., Oshima, Y., Yoshida, S., Enaida, H., Tsuchihashi, T., et al. Genome-wide association study identifies two susceptibility loci for exudative age-related macular degeneration in the Japanese population. Nature Genetics 43, 1001–1004 (2011).article