Research Highlights :

極端紫外レーザーで「超蛍光」を確認

18 May 2012

多数の気体原子の集団が一斉に光を放出する「超蛍光」現象は、優れた画像撮影技術につながるかもしれない


図1: 特製のレーザーチャンバー。ここにヘリウムガスのパルスと理研の自由電子レーザー「SCSS試験加速器」からのパルスが同時に入る。青緑色の光は生じた超蛍光。

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© 2011 永園充

高分解能の画像撮影技術では波長の短い光が多用される。波長の短い光なら小さな構造まで分解して撮影できるからだが、極端紫外線やX線などの波長の短い光を出す光源は、波長や放出のタイミングが不安定であることが多い。このほど、理研放射光科学総合研究センター(兵庫県佐用町)をはじめとする国内の4研究機関からなる共同研究チームが、強力なレーザーを気体に照射することにより、こうした問題の多くを解決できると期待される光源を開発した1

今回、研究チームが利用したのは「超蛍光」という現象だ。超蛍光は、複数の励起原子が蛍光を放出して低エネルギー状態に戻るとき、原子間の距離が蛍光の波長よりも短い場合に起こる。この環境にある励起原子は集団で低エネルギー状態に戻るため、個々の原子が放出する蛍光は波の山や谷の位置とタイミングがそろってコヒーレントになり、結果として、質が高く、ピーク強度の高いパルス状の超蛍光を放出する。

研究チームはこのたび、理研の極端紫外自由電子レーザーで、高エネルギーのレーザーパルスをヘリウムガスに照射して超蛍光を作り出し、観測を行った。自由電子レーザーを使った研究は、過去に別の研究者によって行われているが、それはレーザー照射により放出された荷電粒子をモニターして物質の特徴を調べるというものだった。今回の研究は、荷電粒子ではなく蛍光の放出をモニターした点と、超蛍光の条件を満たすように試料の密度を高めに保った点で、従来の研究とは異なっている。

この実験を行うに当たり、研究チームは、自由電子レーザーパルスが到着した瞬間に高密度のヘリウムガスのパルスが送り込まれるような特殊な弁を備えたガスチャンバーを設計、製作した。その結果、この装置で指向性の高い青緑色の蛍光が生じたことを確認した(図1)。また、生じたパルス光が原子密度や時間とともにどのように変化するかを測定したところ、パルス光が超蛍光の結果として生じたことを認めた。さらに、入射光から放出光への変換効率は、超蛍光で期待される効率と矛盾しなかった。

今回観測された超蛍光は可視領域だったが、レーザービームのエネルギーを変えて別の物質を照射すれば、X線超蛍光を発生させることも可能なはずだ。論文の第一著者である理研の永園充チームリーダーは、「私たちは、超蛍光を使って、特定のX線波長の完全にコヒーレントなパルスを作りたいと考えています。そうすれば、感度が大きく改善した元素特異的X線画像撮影が可能になるでしょう」と語る。今回の結果は、自由電子レーザーを使った過去の実験でも超蛍光が発生していた可能性を示しているが、その確認にはデータの再検討が必要になるだろう。

本ハイライトの原著論文の著者情報などについては、理研播磨研究所放射光科学総合研究センター利用連携チームまでお問い合わせください。

  1. Nagasono, M., Harries, J.R., Iwayama, H., Togashi, T., Tono, K., Yabashi, M., Senba, Y., Ohashi, H., Ishikawa, T. & Shigemasa, E. Observation of free-electron-laser-induced collective spontaneous emission (superfluorescence). Physical Review Letters 107, 193603 (2011). article